鹿児島のある旅館に泊まったときのことです。
飾りの少ない自然な素材をつかったお部屋の中に一際色鮮やかな、赤、黄色に黒の線が描かれた小箱が目に飛び込んできました。見たことのない形と大雑把な線のデザインは何とも温かく、何が入っているのかも気になりました。
蓋を開けてみると、そこには今すぐチクチクと縫製できるように糸が通されている針山と、ハサミや爪切りなどが入っているではありませんか。
よくみるとその箱にはスタンプで押したような文字で鹿児島神宮とあります。
お聞きするとこれは浦島太郎物語のモデルにもなった”海幸彦と山幸彦伝説”の奥方様の豊玉姫の伝説に因んだ信仰玩具の一つで、豊玉姫のお興入りの時の調度化粧箱が、代々受け継がれ、今日はこのような色とデザインになっているそうです。
この化粧箱、謂れは諸説あり浦島太郎の玉手箱にも通じると言われているとか。
その土地の伝統玩具などを訪れる人に見てもらい、知ってもらうことで
鹿児島の歴史に触れるよいきっかけになり、旅もいっそう心に響く時間になるのではないかと思います。とてもよいアイディアで感動致しました。