電車を待っていると藤色のスプリングコートを着た白髪の女性と、年配の男性がポソポソと会話をしていました。
車内で横に座るとその会話が耳に入ってきました。
「クラウディア・カルデイナーレは山猫の方がよかったわね」と女性。
そうだね、と男性が頷きました。
ヴィスコンティの山猫の映画も観られているとは映画がお好きなのかしらと私は耳を立てました。
「私はあの映画の前の彼女が好きだわ」
そんなことを話す女性にまた頷く男性の図がなんとも微笑ましく思いました。
少しまだ肌寒い東京の渋谷で、年配の女性が綺麗な藤色を着こなしていること、
そして古い映画を男性と観た帰りにその女優の話をされていることが心をほんのり温めてくださいました。